大阪で流行りの蛙の王様

2015/03/07

 ある沼池の中で、沢山の蛙が、喧嘩をすることもなく、たいへん幸福に暮らしてゐました。蛙達は誰に気がねをする事もなく跳ね合つたり、水を飛ばせたりしてゐました。しかし、そのうちに誰かゞ、このまゝではいけない。王様を頂いて適当な制度を作らねばならぬと言ひ初めると、みんながそれに賛成し、ジョーヴと云ふ神様にお願して、王様を立てて貰ふことに相談をきめました。「おゑらいジョーヴ様。」と蛙達は言ひました。「どうぞ私達をおさめて行く王様をよこして下さい。」
 ジョーヴ神様は蛙共が鳴き立てるので笑つてきゝ届け、王様として巨きな材木をザンブリと沼の中に投げこみました。蛙達は突然起つた此の物音に、吃驚仰天して堤の上に逃げのぼり、しばらくの間は言葉もなく、この恐しい怪物を眺めてゐました。が、この材木王はいつまで経つても少しも動かないので、蛙の中でも最も勇敢なのが、一二匹、大冒険を試みて材木の方へ泳ぎついて、それに触つて見ましたが、それでも動きません。たうとう蛙の中の一番の英雄が材木の上に飛び上って、ダンスを始めたので、外の蛙もみんなそれに倣つて、同じやうに飛び上り、同じやうにダンスの仲間に加はりました。やがて蛙共は自分達の中に遣されたこの新らしい王様を、崇めやうとしないばかりか、馬鹿にさへするやうになりました。
 蛙共は又ジョーブ神様の所へ行つて頼みました。「材木王は寝てばかりゐられますから、あんなのでなくて、命のある、動くことの出来る王様をよこして下さい。」
 そこでジョーブ神様は鰻を遣しましたが、蛙どもはすぐこれにも馴れて敬はなくなりました。
 そこで三度ジョーブ神様のところへ行つて頼みました。「あんなにぬらりくらりしたのでない、もつと元気のいい王様をよこして下さい」
 この願がきゝ届けられて、やつて来たのは鶴大王でした。この鶴大王は蛙を片つぱしから餌食としてたべて了つて、今はこの広い沼の中にたつた二匹しか蛙はゐなくなりました。その一匹が言ひました。「私達にもつと智恵があつたら、あんな馬鹿なお願をジョーブ神様にもちかけはしなかつたらう。私達は滅びることを望んだのではないのに。今はさうなつて了つた。
 他の一匹が言ひました。「余りに厳しい規則があるよりは規則のない方がよい。」
原文まま(イソップ童話 春秋社,1924)
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